Winter bell
仕事中は、ほぼ無心だった。


正確には、放心状態だと言った方がいいのかもしれない。


「松井さん、お茶!」


先輩に指示されても、無言で立ち上がる。


「ちょっと!聞いてるん!?」


煩い……


「すみません……。給湯室、行ってきます……」


ただ、返事をするのが煩わしかっただけ…。


仕事なんて、今のあたしには一番どうでもいい事。


給湯室で、お湯が沸くのを待ちながら携帯を開いた。


そっか……


晴稀のデータも履歴も、全部消したやん……


データが無いと、晴稀の番号もアドレスもわからない。


何で消したんかな……


そんな言葉が頭の中に過ぎって、自己嫌悪に陥ってしまった。


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