Winter bell
結局、定時を過ぎていた事にも気付かないくらい、ずっと忙しかった。


これが先輩の目的だったのかもしれないけど、今日はそれすらもどうでもいい。


あたしは、カップル達が幸せそうに行き交う賑やか街を、一人寂しく歩いていた。


クリスマスで浮かれた街なんて、見たくないのに…。


すごく足が重い。


トボトボと歩いていると、不意に頬に冷たい物を感じた。


「雪……?」


寒空から降って来たのは雪では無く、冷たい雨…。


カップル達が残念そうにしているのを横目に、ため息混じりに駅へと急いだ。


もし、明日雪が降ったらホワイトクリスマス。


一人ぼっちのあたしにはそれも虚しいけど、雨でも充分過ぎるくらい憂鬱だった。


< 96 / 129 >

この作品をシェア

pagetop