Night Large Snake
この頃、泣く時は決まって海の腕の中にいる。
不思議な感覚。
海の香水の香りとかを感じるから、安心する。
もう一人じゃないって思える。
金髪で青いピアスしてて『夜の大蛇』の総長で。
ただ一人の人間。
私はひとしきり泣くと、黙って海の胸倉から顔を離した。
そして、長袖を肘まで捲った。
「…転んだ。」
少し言い方を変える。
転んだ、ではなく転ばされた、なのだけど。
「誰だ。」
それに気づいたらしい。
「分かんない…。」
クラスメートの名前すらちゃんと覚えていない私が、足をかけた当人の事なんて覚えてすらいない。
ただ、分かる事は告げ口しておいた。
「先輩みたいな人だった。」