Night Large Snake

少し時間が経ってから、京がリビングの入り口で止まった。

「都。」

ふざけたように“ミヤちゃん”とは呼ばず。

九条さんは、その言葉と声だけで何があったか分かったようで、立ち上がる。

私は何が始まるのか、一人だけ分からないみたいだった。

「…どこか行くの？」

そんな私の質問に、九条さんは笑顔をみせる。

すごく不安が募る。

何で何も言わないの？

「大丈夫よ。」

…また。

九条さんは、“大丈夫”と言う。

「すぐ帰ってくるから。うーちゃん、良い子にしてろな。」

冗談まじりに、京は言った。

私は…。

何も言わずに、二人の背中を見送った。