Night Large Snake

この世に生まれて良かったと思う。

死んでしまったけど、妹もいた。

中学の卒業間際、約束を誓える友達にも恵まれた。

凛とした空気を出す九条さんにも、馬鹿っぽい京にも会えた。

そして、海にも会えた。

…私に似てると思った。

カッターを手首に当てる。

慣れてるこの感じ。

今までに約二回、同じ事をしてる。

その時、携帯が鳴った。

バイブ音がずっと。

上着のポケットに手を突っ込んで、ディスプレイを見ると知らない番号。

この人が、もしかしたら私の遺書を書いてくれるのかもしれない。

馬鹿な想像に少し笑いながら、うずくまって電話に出た。

「もしもし。」

『どこにいんだよ。』

…想像もしなかったこの声。



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