Night Large Snake
「…か、家族旅行。」
『そこから見える物、言ってみろや。』
怖い。
唸るような低い声に、すごく怯む。
「…エッフェル塔。」
「『眼科行くか?』」
声が二重に聞こえて、顔を上げると大きな影。
馬鹿にしたような声とは裏腹に、不機嫌そうな顔。
美形は不機嫌そうな顔をしても美形らしい。
「…誰ですか?」
ここまで来て、私はすっとぼける事にした。
「何持ってる?」
私の質問は、金髪頭には入らないのか。
逆にその質問に自分の手を見た。
カッターを持つ手が小刻みに震えていた。
なんだ、私。全然慣れてないじゃん。
…本当は死ぬ勇気なんてないくせに。
「止める?」
嘲笑して、聞いた。
アナタは死のうとしてる私を止める?
「…いや。」
やっぱり。