音を奏でるとき



「……ギター…とか?」



少し焦りながら答える椎夏。


「やってたの?」

「中学のときちょっとね」

「すげーっ」

「すごくなんかないよっ」

「いや、す… ガコンッ!!


弘人の言葉を遮るように拓実は椅子を蹴っ飛ばした。


「おい。お前さ、いきなり来てなんなの?だいたい、新人が入る季節でもないし…」


込み上げる怒りを抑えながら拓実は聞いた。


「あたしがここに来たのは、この軽音部を再生するためだよ」




「再生?」



「そ。最近なんの行事にも出てなかったでしょ?だから私が先生に直々に頼まれたの」



「なんでお前が…」




「それは……留年の危機を脱するために…モゴモゴ…」



「つまり、留年になりそーなお前は、この軽音部を行事に出せば留年を免れられるってこと?」


「簡単にいえば…」
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