私の名前も呼んで


違うルートを散歩するようになって1週間。

彼に会えない寂しさはあるものの、私もコタも朝の日課にだいぶ慣れて来た頃…

「あれ?桜ちゃんだ」
と、嬉しそうに声を掛けられた。

「えっ?」

振り向くと先日の手紙の彼だった。

「おはよう」

「おはようございます」

「オレらタメでしょ? 敬語は止めてよ」

「う、うん」

「犬の散歩? かっわいいねぇ。名前は?」

「コタロウ。コタって呼んでるの」

「へ~、お前コタか。オレ良って言うんだ。よろしくな」 良くんはコタの顎を撫でた。

「あ!ヤバ。朝練に遅れる!!」

"オレんちも犬がいるんだー"良くんは名残惜しそうに、喋りながら去って行った。

「またなぁ」

大きくぶんぶんと手を振って。


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