約束 〜promise〜
若井さんの車に揺られること数十分。
郊外にある大きなスタジアムについた。
実は、今日のホームゲームになるチームに、うちの会社もスポンサー契約しているらしい。
だから、水沢さんがいい席を取ってくれたんだって。
ラッキ〜!
スタジアムに入ると、すでにサポーターの熱は最高潮。
あたしたちの席は、多くのサポーターがいる席とは違う、昇降口の真上のとびきり良い席だった。
さすがにサッカーを知らないあたしでも、間近に見える大迫力のピッチに大興奮!
「こんなに広いんだー!すごーい!」
「だろ?テンション上がるよなー」
若井さんは、入社以前からのサポーターで、何度も試合に足を運んでいる。
首には応援タオルがマフラーのごとく巻き付いている。
「あ!そのタオル!いいな〜!!」
あたしは指を指して、そのタオルをねだった。
すると、何かを思い出したように、かばんをあさっている。
「香苗の分もあるよ」
「うそ!やった〜!」
かばんから出てきた、お揃いのマフラータオル。
あたしは嬉しくて、すぐに首に巻いた。
「おー、可愛いな」
「えへ、」
よしよし、と頭を撫でられて、なんだか照れる。
会場の熱気がより一層高まった。
選手たちが入場してきたのだ。
盛り上がるサポーターたちみたいに、若井さんは勢いよく立ち上がった。
なんか、少年みたいだなあ…
意外に可愛いかも。
このときは、まさかあんな出会いが待っているとは知りもしなかった。