約束 〜promise〜
0−0のままハーフタイムを迎えた。
若井さんは、お目当ての選手に目を奪われている。
あたしは、引き揚げてくる栄次に釘付け。
ただじっと見つめるだけ。
白くて荒い息を吐きながら、スポーツ飲料を飲んでいる。
少し顔を上げた栄次。
そのとき、
ほんの一瞬だけど、確かに目があった。
だけど、栄次は何事もなかったように昇降口へと消えていった。
ぺたん、と席に座る。
一瞬だけど、栄次はこっちを見ていた。
あたしのことなんて忘れてるかもしれない。
でも、ただただ嬉しくて、心臓の動きは加速するばかり。
「香苗、なんか食う?」
「へ?」
いきなりした若井さんの声に、すっとんきょうな返事。
「スタジアム限定のやつとかさ、食べる?」
「あ、うん!食べたい!」
心臓のドキドキを隠すために、あたしは首を強く振って頷いた。
あたしは今、若井さんとデートしてるんだから。
それに、栄次なんてただの幼なじみだし、久しぶりに元気な姿見て、テンション上がっただけだよ。
そうそう!
「じゃあ、買ってきてやるから待っててな?」
「ありがとう」
「はいはい、」
頭をひと撫でして、若井さんは行ってしまった。