ただそれだけ、
私はその時間を利用して
保方を呼び出した。

用事は“告白”するためで、
人気がない静かな理科室で
私が沈黙を破る。

「用事ってゆーか、
ちょっと言いたい事あって…」

何てゆえばいいのか
わからなくて、
適当に話出してみたけれど…

この後どうしよう………

私はまた、何も考えないで
動いてしまった。

保方は何を言われるのか
そわそわしている様子だった。


―――好き!!

…なんて、この年になると
ますます言えなくなっていて、
私は壁の方に保方を引っ張った。

今出来る精一杯の告白。

壁に、

「スキ」

と片仮名で書いて、
分かったのかも確認せずに
恥ずかしさに負けて
廊下に走った。

私の心臓が、
ひとりドキドキしていた。
< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop