泣かない理由
私の隣に座った男は、しきりに私に話しかけてきた。

それも、下らない自慢ばかり。
しかも、自分で成し遂げた自慢ならまだしも、大体が友達や親に頼ったものなのだ。

私はいい加減、蒼の皮肉っぽく歪められる顔が見たくなってきた。

甘ったれたニヤケ顔と、煙草臭い息の、隣にいる男ではなく。

ゾワリ。

太ももに、気持ち悪い感触。

「ね、二人でこの後、抜けない?」

私は耐えきれず、「かえる!」と宣言して、あっけに取られているその場を後に、駆け出した。
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