泣かない理由
駅から、ひたすら走って蒼の部屋に着いた。

時刻は、夜の9時過ぎ。

「お帰り、チマ」

蒼の顔を見たら、何だか酷く泣きたくなった。

(だめだ、泣いちゃ)

「どうした?」

訝しげに蒼が私の顔を覗き込む。

後ろで、パタンと扉が閉まる音がした。

それと共に、ようやくの思いで堪えていた涙が、ボロボロと、こぼれ落ちてしまった。
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