泣かない理由
「後は、トマトと挽き肉だな」

蒼は夕食の買い出しで混み合うスーパーの通路を、器用に人にぶつからない様に進む。

遅れまいと、慌てて蒼を追いかけたら、何も無い所で躓いた。

商品棚に突っ込みかける。

目を瞑って、衝撃に備えたが、グッとお腹に何かがまわされた感触がしただけだった。

背中には、誰かの体温。

「チマは相変わらず鈍くさいな」

頭上からしたのは、蒼の少し低くて、心地よい声。
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