泣かない理由
会計を済ませて、店の外に出た。

買い物袋を持った蒼は、夕暮れの空気に、目を細めた。

「綺麗な夕日だな」

私は空を見上げた。

徐々に濃くなっている、少し夜色の藍。

血潮のような朱。

それから、真ん中の紫。

夕日は、全てのモノを等しく同じ色に染めている。

手を繋いで歩く親子や、道を急ぐサラリーマン。

彼等はそれぞれ、良い匂いのする暖かな部屋へ帰って行くのだろう。
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