泣かない理由

夜桜

「まだ、外サムイね」

だけど、どこか柔らかな春の匂いが、夜の冷ややかさを和らげていた。

道の端には、茶色とピンクが半々。

何処からか、ひらりと一片、桜の花が飛んできて、地面に落ちた。

「途中の公園、まだ少し桜咲いているよ。ちょっとだけ夜桜、見に行こう」

「そういえば、今年は桜、見てないな…」

いつもは走って帰る道のりも、蒼と一緒だと、すぐに帰ってしまうのが勿体ない。

私は蒼を近所の公園へと誘った。
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