泣かない理由
突然の事に驚く間もなく、私は蒼に抱きしめられていた。

蒼は、震えていた。

「どうしたの?蒼」

ギュッと、幼子がぬいぐるみを不安げに抱きしめる仕草で、私を抱きしめる蒼に、そっとたずねる。

「ごめん、チマが桜に連れて行かれる気がして、怖くなった」

蒼の声は、蒼の体と同じ様に震えていた。
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