泣かない理由
私以外に、その時彼を必要とする存在は無かった。

少なくとも、彼はそう感じていた。

必要ないならと、彼は世界と距離を取るようになっていった。
高校に入学した辺りから、彼は私と一緒でなければ外に出ないようになっていった。

私達は同じ高校に進学し、そうして毎日一緒に登校して、一緒に下校した。

高校を卒業した後、彼は親元からも離れた。

趣味で初めた株取引と、遊びで作ったらしいプログラムがヒットして、お金に困らなくなった彼はとうとう、ほとんど引きこもりという地位を得た。
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