泣かない理由
私は、そんな蒼の引きこもり癖を治すべく奮闘しているわけだが、本人にその気がないので、結果は芳しくない。

蒼は、私だけ居れば良いと言うが、それではダメだと、私は思う。

蒼の世界には、私しか居ないなんて、そんなの、寂しすぎる。

私は、蒼が好きだ。

本音を言うと、実は蒼を誰にも見せたくない。

蒼はとてもカッコイいし、頭が良くて、優しい。

きっと、蒼が外に出る事を覚えたら、たちまちの内に、何処でも人気になるだろう。

中学生の時は、蒼の異質さは裏目に出てしまったが、今は誰の目にも、蒼の大人っぽい達観した雰囲気は魅力的に写るだろう。

蒼が外に出たら、私は蒼に必要無くなる。

偽善なのは自覚している。

それでも、やっぱり私は蒼に、もっと色々な人と知り合って、そして幸せになってもらいたいのだ。
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