君に捧ぐ‥



「はー…今日はちょっと遅れちゃった……」



放課後、先生に捕まって少し時間がかかってしまった。




「寝てるかもなー」



そんなことを考えながら、凪ちゃんの病室のドアノブに手を伸ばしたとき、中から声がした。




「忘れられないのっ!」




ドキンッ…



この声は、沙帆さん……?


やっぱり、忘れられない人って凪ちゃんだったんだ…




「…クリスマスイブ、会ってほしい。」



クリスマスイブって…あたしと約束した日……




凪ちゃん、断るよね?


だってあたし、凪ちゃんの彼女だし。


先にあたしと約束したよね?




そんな考えが頭をグルグル回る。


胸の鼓動は大きくなるばかりで。




断って……
お願い、断って!



心の中で、祈っていた。






「…………わかった。クリスマスイブ、会おう。」




プツン…と、あたしの頭の中でなにかが切れるような音が聞こえた気がした。










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