君に捧ぐ‥
「待って…雛ちゃん!」
沙帆さんが、息を切らしながらあたしを追いかけてきた。
あんなに可愛いと思っていた“ミサキ”の仕草さえも、なんとも思えない。
「あのっ…抜け駆けするみたいに凪取っちゃってごめん!でも、今雛ちゃんと凪が付き合ってても…やっぱり、諦められないの。」
あたしは、何も言わずに沙帆さんを見つめてた。
この人は何を言ってるんだろう?
凪ちゃんと沙帆さんは両想いで。
だからあたしは傷つく前に身を引いたのに……
まだ、あたしを傷つけようとしてるの?
「あたし、クリスマスイブに凪に告白するよ……」
なんで、そんなことあたしに言うの?
「それで、フられてくるからっ!だから、クリスマスイブは凪を貸してね」
かす……?
凪ちゃんは、沙帆さんが好きなのに……
あたしと凪ちゃんは、別れたじゃん……
「その話、あたしには関係ないんで。さよなら」
あたしは、顔も見ずにその場を去った。
これで、あたしと凪ちゃんの秘密の恋はおしまい…
―最後の約束くらい、
守ってほしかった…。
先生の、うそつき……
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