君に捧ぐ‥
「凪……?」
違う。
この匂いじゃない……
こんな甘い、イチゴの香りじゃない。
俺が好きなのは、もっと爽やかな……
「シトラスの香り…」
「え?」
「ごめん、沙帆。俺、イチゴじゃなくて、シトラスじゃないとダメだ!」
「凪?何言ってるの?」
「……俺、おまえの甘いイチゴの香り、すっげぇ好きだった。でも、今沙帆を抱きしめたとき、匂いが違うって思った。俺は……雛が好きだ。」
「……」
「だから、ごめん。沙帆とつき合うことはできない。」
「……匂いかぁ。あたし、凪に好きって言われたから、別れてからもずっと同じ香水してたのに……」
「ごめん……」
もう少し会うのが早かったら、沙帆を選んでたかもしれない。
でも、真正面からぶつかってくる雛に、
強がりなくせに泣き虫な雛に、
心を奪われてしまったから。
「こんな俺を好きになってくれて、ありがとう。俺もお前のこと忘れた事なんて一度もなかった。これからも忘れない。本当に、愛してた…。」
「…そんなこと言われたら、嫌いになれないじゃん……ありがとう、あたしも凪を好きになれて幸せだったから、今度は雛ちゃんを幸せにしてあげて?愛してる、凪…。幸せになって。」
沙帆は、一筋涙を流し、その場を去った。
このときの沙帆は、俺が今まで見た中でも一番綺麗だった。
さよなら、沙帆。
俺の長い長い忘れられない恋が終わった。
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