君に捧ぐ‥



「……っ!」



“いいえ”

そう一言、言えばいいだけなんだ…。


言えば、いいだけなのに…




口が、動かない。


体の指一本も、動かせない。



「春風先生。」



ビクッ


教頭先生の言葉に、体が反応する



「…答えないということは、肯定を意味します。違うのなら違うと、はっきり否定なさい。」


「……」



「春風先生。」




「俺は…」


“生徒と恋愛関係など、持っていません。”

言えば、いいんだ…。



― 沙帆とのことを、俺自身が否定するのか?



自分の気持ちを偽って、自分たちを守るのか?




そんなの…


そんなの、恋愛じゃない!




「悪い、沙帆…」


おまえをまた、傷つけることになるかもしれない…
でも、俺がおまえを守るから。



「え?」





「俺は生徒の白石沙帆とつき合っています。」










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