甘恋綺譚〜幼なじみは王子様〜


その日、昨夜決めていた黒のパンツに、群青色のサマーニット、そしてロザリオのロングペンダントにサングラスで仕上げ、マンションを後にした。
11時20分。美弥子と待ち合わせの時間には少し早いか。

電車に揺られて10分ほど。座れない10分はいつもながら長かった。

下りエスカレーターに乗ろうとしたとたん、斜め後ろの若い女性に舌打ちをされる。
何でこのタイミングで?私、何か悪いことした?

気にしないように、そのまま流れに身を任せてエスカレーターに乗り込む。

前に立っていた女性が心配そうに振り向いた。

あ、もしかしてこの舌打ち女の連れ?
割り込みしやがって、って思ってる?

追い抜こうにもそのエスカレーターは二人分の幅の設計をされていないので無理だ。

気付かなかったあたしも悪いけど、舌打ちなんて周りにどう思われるかわかってんのかな?



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