甘恋綺譚〜幼なじみは王子様〜
待ち合わせていたはずの西口改札に美弥子の姿はない。
舌打ちで滅入っていたのに追い打ちをかけられた。
カミサマは今日を心行くまでBad dayにしたいみたい。
仕方ない、暇つぶしだ。
時間を潰すのは苦にならない。
いつものように、道行く人に目をやる。
日曜日のこの時間、人間観察のネタには困らない。それは幸い。
−スカートの色とストッキングの色合いが残念。
−おじさん、メガネ変えなよ。そのフレームは似合わないから。
−そのワンピースは好きだけど、個人的にはウエストマークした方が好き。
一瞬あって、ワンピースの女が美弥子だとわかった。
「美弥子、遅い」
「ごめん!純のファッション、今日もきまってんね。なにげに見習ってんだけど、足元にも及ばず……」
親友の美弥子が首をすくめる。美弥子が着るものに迷って遅刻するのは、珍しいことではないから、すぐに水に流す。
美弥子とは15年の付き合いだ。
お互いが社会人として、別々の道を歩き始めた今でさえ、週に2回はこうやって食事する。