夢〜明日への奇跡〜(実話)
『滝沢さん!!シャンプー詰め替えどこにありますか?滝沢さん!』

『あっ!ごめんね!ぼーっとしてた…倉庫の中にあるはずよ』

私は祖父の写真を見ながらあの時を思いだしていた。私が涙目なのを疑問に思ったのか祥子が顔を覗きこむ。
『滝沢さん…今日…おじいちゃんの命日ですよね?』
私がどれだけ祖父が大好きかは 希望苑みんなが知っていた。私が介護福祉士になった訳も。
彼氏が出来ても祖父と比較してしまい長続きしないことも知っていた。

『滝沢さんって本当愛されていたんですね!この写真の二人を見ると伝わってきますよ』

『そうだね…。恋人みたいって言われてたからね。通夜の時も葬式の時もじーちゃんは死んでないって暴れたらしくて泣きすぎて気絶するし大変だったみたい。何も食べれなくなってずっと祖父の遺骨を抱いてたんだって。親戚が集まると
“暴れん坊が来た”
って今だに言われるんよ(笑)』

『あはは…そうだったんだ。でも羨ましいな。おじいちゃんの死を受け入れるの大変だったんじゃないですか?』

確かに
かなりの時間がかかった。

いつもいつもそばにいてくれるのが当たり前だったから
【もう一生会えない】

なんて思えなかった。


【れいちゃん…おいで…】
そう呼んでくれているような気がしてならなかった。
< 16 / 122 >

この作品をシェア

pagetop