アリス図書館‡QUEEN
アリスが見ている先は空。
憂もその先を見上げて見たが、特に何も見当たらない。
「・・・あ」
その時、満月をバックに何かがやって来ているのが見えた。
それは段々とこちらへと近づいて来ている。
「もしかして・・・人?」
近づいて来るのにつれ、徐々にその姿もハッキリと見えてきた。
それは黒髪を風に靡かせ、綺麗な着物を着ている女性だった。
「憂、笛を」
「ぁ、ハイ」
手だけをこちらへと差し出したアリスに、慌てて近づいて笛を手にのせた。
その直後、風と共にふわりとその場に現れた。
「久しぶりじゃのうアリス」
「こんばんは、かぐや姫」
アリスの〝かぐや姫〟という言葉に、憂は目を点にした。
かぐや姫・・・竹から生まれた美しい娘で、最後には月へと帰ったという・・・
「かぐや姫ェエ!?」
かぐや姫、と呼ばれた着物の女性を指差しながら憂は叫んだ。
「なんなのじゃ、この娘は。いきなり叫びおって」
眉をひそめながらかぐや姫は言う。
「だ、だって!かぐや姫ってお話の中の登場人物で、空想上の人物じゃ・・・」
「どうしてそう思うの?」
アリスが初めてこちらを見る。
「どうしてって、竹から生まれたりとか、月へと帰るとか、そんなのありえないし・・・」
「絶対にそうだって言える?
だったら、貴方の願いを叶えた私は何なの?
私は信じられて、かぐや姫は信じられない?」
憂はぐっと押し黙る。