アリス図書館‡QUEEN
そして、視線を壁にかけてある時計に向ける。
「まだ、七瀬くんは帰ってこないし」
時刻は午後1時過ぎたほど。
それからまた、もう一度チャイム。
「誰だろ?」
なるべく音をたてないように、美里は立ち上がると、鳴りつづけるドアへと抜き足差し足で忍び寄った。
そしてそっ、とドアに手を添えると、除き穴に目を近づけた。
「・・・・・・」
外にいたのは、スーツを来た青年。
誰だろうか、と美里は居留守を決め込もうとまたリビングに戻ろうとした。
『美里さん?いませんか?』
「!!」
だが、自分の名前を呼ばれたことに、ピタリ、と足を止めた。
「(なんで・・・私がいるって知って?)」
自分がここにいることを知っているのは、部屋の主である七瀬、その部下飯田だけのはずだ。
「(まさか・・・)」
嫌のことが頭に過ぎり、美里はごく、と唾を飲み込んだ。
『あの・・・僕、七瀬さんの部下の長谷田って言うんですが』
「・・・・・・」
部下の長谷田?
聞いたことない、と美里は眉根を寄せるだけで返事はしない。