アリス図書館‡QUEEN



「・・・李兎さ、静さん覚えてる?」



「当たり前だろう?」



「その静さんにさ、彼氏の・・・堂本さんがいたじゃん。」



「いたな」



「・・・一昨年に、交通事故で亡くなったんだ」



「知ってる。葬式にも行ったよ」






紅葉は顔を歪ませ、苦しそうな表情をしている。






「静さん、堂本さんとよく一緒にここでコンサートしてたよね。堂本さんがバイオリンで弾いて、静さんが唄う」






紅葉がコンサートようになっている小さなスペースに視線をやった。






「でも静さん、堂本さんが死んで唄う事やめて、実家に帰っちゃった。その時に、本来なら静さんが持っているはずの、堂本さんが使っていたこのバイオリン貰ったの。次会ったときは弾いて聴かせてって・・・」



「へぇ」






関心のない、冷たい返事。
だけども紅葉は構わず話し続ける。






「私、李兎に紹介してもらってたまに堂本さんにバイオリン教えてもらっていたから・・・。堂本さん見て・・・バイオリニストになりたいって思った。だから事故にあったってきいたとき、まさかって・・・目の前真っ暗になった」



「・・・・・・」



「事故はガードレールに突っ込んで爆発がおきるほど。堂本さんの遺体はその衝撃で海に放り投げ出された。結局遺体は見つからなかった」





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