アリス図書館‡QUEEN




夏には溢れんばかりの人が集まる海も、冬には砂浜がだだっ広く広がっている。

そんな海を見渡せるように展望台もかねての灯台が近くにはあった。


螺旋の階段をあがっていくと扉があり、あけると場所が高いせいか強い風が吹いてくる。






「・・・静、さん?」






長い黒髪を風に靡かせ海を眺めている女性は紅葉の声に振り向いた。






「紅葉ちゃん?」






片手を手摺りにのせ、もう片方の手で髪を押さえながら紅葉を見る双方の瞳。

しっかりしてそうで、どこかはかない印象の女性――静は眉をハの字にさせて笑った。






「アリスさんだなぁ?ここ教えたの」







紅葉はコクッと頷いた。






「バイオリン、ずっと弾いててくれたんだ。ありがとう・・・」






バイオリンケースを持っている紅葉の手を見て微笑んだ。






「約束、しましたから。静さんと、堂本さんと・・・」



「そっか・・・」






静はそういうとまた海に視線を戻した。






「・・・李兎への復讐をアリスさんに頼んだのは、静さんですか?」






俯き加減で尋ねる紅葉。

わかっていても確かめずにはいられない。


静は紅葉に視線を移すことなく答えた。






「うん・・・」






わかっていたこと。

わかっていたことだけれど、一瞬紅葉の瞳が揺れた。






「どうして、今更」






ギュッと両手で持つバイオリンケースに力をこめた。



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