アリス図書館‡QUEEN
憂が学校に行っている時、事件は起こった。
引越しの準備をしていた憂の父と佳奈可、母のもとに強盗が入った。
刑事だった憂の父は立ち向かったが相手は三人組でさらに二人は銃を持っていた。
敵うはずもなく撃たれた憂の父に続き、最後に憂の母も撃たれてしまった。
そこに住人か誰かが呼んだ警察と救急車がやってきて犯人達は現行犯逮捕。
二人は搬送されたが間もなく亡くなってしまった。
まさにドラマや漫画のような展開。
憂にはなにもかもが信じられなかった。
だから、遺体と対面したときも泣くこともなく、ただ茫然としたままだった。
通夜をしている今この瞬間も、頭を下げることなどなく、涙を流しながら去っていく人達をボーッと見ていた。
「憂、大丈夫?少し休む?」
隣に一緒に立っていた姉が心配そうにきいてきた。
「・・・大丈夫だよ。なんか、現実味がないだけ」
弱々しく姉を安心させるため笑顔を向けた憂。
「憂ちゃん、奈々ちゃん・・・」
二人の前には黒の着物に身を包んだ美麗の母親と黒のワンピースの美麗がいた。
「おばさま・・・」
「おばさん、美麗ちゃん、お忙しい中ありがとうございます・・・」
姉がお辞儀しながらいうと美麗の母親は首を振った。
「・・・二人のお母様と、お話してみたかったわ。
きっといいお母様ね。
だって、貴女達の母親になった人だもの」
優しく笑みを浮かべて話す美麗の母親は、決して過去形にはしなかった。
それが憂には嬉しかった。