アリス図書館‡QUEEN



その時、曇天の空から雨がふってきた。


親戚の人がそろそろ中に入ろうと言うのを合図に皆ぞろぞろと建物の中へ入っていく。




      「憂」





呼び止められた憂が後ろをむくと、美麗がニコニコと笑顔を浮かべていた。


最後尾を歩いていた憂がとまったことに誰も気付かず、皆中に行ってしまった。



「よかったね」



「・・・?何が?」




美麗の言葉に怪訝そうな顔で首を傾げた憂。

それはそうだ。
この状況で何がよかったというのか。



「フランスに行かずにすんで」



「え・・・」



「これでずっと一緒だね」


雨に濡れながら笑った美麗を見て、まさかと憂は思った。




「憂!美麗ちゃん!何してるの!早く中にはいりな!」




憂の姉が呼ぶ声で美麗は憂の横を過ぎ中へと入って行った。


だが、憂はそこに立ったままだった。



「・・・嘘、よ。だって、ありえないし・・・。だけど・・・」




憂は、やけに雨の地面を打ち付ける音が耳に響いた気がした。


再度姉に呼ばれて、やっと憂はその場から離れる事が出来た。
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