初恋をもう一度。
「…唯っ!!!」
彼女はびくっとしたように振り返った。
「な、なんだぁ、佐野くん!!!いきなり大きな声…びっくりしたよ~」
恭平は勢い余ってかなり大きな声を出してしまった。周囲は人がかなりまばらだったが、2人に目をやる人が何人かいた。
「…ごめん」
「あはは、佐野くんも家出るの早いんだね。おはよ」
「…」
恭平は言葉に詰まった。「おはよう」といった類いの挨拶には、昔から何となく気恥ずかしさがあったからだ。
「誰か待ってるの??」
「あぁ、今日は…お前を待ってたんだよ」
「…わたし??」
信号がおもむろに点滅し、やがて赤に変わった。
「話が…あって…、聞きたいことが」
「どうしたの??」
状況はまだ掴めていないようだ。唯は様子を窺うように、少しだけ恭平に近づいた。
「俺のこと…俺のことは…」
何から話せば、どういう語順が正しいのか、判断の糸が絡まった。
「昨日…」
「昨日、なに??」
「…昨日、会ったとき、中学卒業以来に会ったみたいに言ったよな」
「うん…確か。…あっ、もしかしてその後にバイト先とかで会った??」
「いや…」
「じゃあ病院とか??」
「え??」