初恋をもう一度。
うわの空―
何も浮かばず、現実の全てを忘れていた恭平を引き戻したのは泉だった。
「…佐野。佐野!!!」
「えっ!!!??」
「え、じゃない。何度も呼んでる」
教室の席についていた恭平は、びくっとして泉の方に振り返った。
彼は今来たばかりのようで、鞄を机の上におろした。
「お前、今日も早かったんだな」
「え??」
「本来なら俺より早く来てるはずがないからな」
泉はいつも登校時間はきっちり早めに来ている真面目ぶりだった。規則正しい生活をする事が、どこか彼に安心感を与えているようだ。
「あぁ…そうだな…」
「…凄まじく気のない空返事だな」
彼はガラガラと音を立てずに静かに椅子を引くと、「さて、それじゃあ聞くか」という顔で恭平をじっと見つめた。
少し間をあけて恭平が言葉をもらした。