初恋をもう一度。
「記憶がなくなったのは俺のせいかもしれない」
「そう言い切れるのか??」
「いや…でも、記憶の無くなってる期間は俺といた時期ともろに被ってる」
「それだけじゃ確証はもてないだろう」
「確証、持てなきゃダメか??」
なんて無茶苦茶なのだろうか―と泉は思ったが、彼はいま混乱の最中にいると見て、あまり論理的に話すのをやめた。
しかし、その時すでに恭平にとって、自分のせいか否かは判断できていた。
賑わいを増す朝の教室の片隅で、彼らだけが黒い渦の底へ巻き込まれていくように―。