初恋をもう一度。
十字路にさしかかった時だった。
「あれっ、…佐野くん??」
顔をあげると、そこに立っていたのは里見唯―さとみ ゆい―だった。
「…唯??」
恭平と唯は中学時代に仲が良く、やがてお互いに初恋というものに気付くと、中学卒業と同時にそれは成就した。
しかし別々の高校に上がると、いつしか2人には距離ができた。
まだ幼かった恭平は、思うように会えない寂しさを、怒りという形で彼女にぶつけるようになっていった。
そして別れが訪れた。
「やっぱり佐野くん!!!よかったぁ、人違いじゃなくって」
「あ、あぁ」
「髪も茶色くなっちゃって…なんだか大人っぽくなったよねぇ」
唯は柔らかい笑みを浮かべている。しかし恭平は、どこか違和感を覚えずにはいられなかった。
「い、今、学校いくところなのか??」
あまりの突然な出来事に、恭平は困惑した。反面、嬉しさもあったが―
「うん」
「いつも、この時間??」
「んー、そうね、だいたいね。今日は学校の花壇の水やりがあるから早いの」
唯は胸あたりまで伸びたチョコレート色の髪に手串を1度通した。
「…そうか」
「じゃあ、私そろそろ行くね」
「ああ」
「中学ぶりに会えてよかった」
…え??
「じゃあね」
笑顔でそう言うと、唯は信号を渡って駅の方角に歩きだした。