初恋をもう一度。
「あっ…、佐野先輩!!!」
河音は目を丸くして、部室の掃除をする手を止めた。
「…お前、何年だっけ??」
自分の苗字のあとに「先輩」という単語がついてきたことで、唐突に疑問をぶつけた。
「あ、今月から2年になりました。…河音涼子です」
忘れられてるかもしれないと思い、下の名前も付け足した。
彼女は無意識的に栗色の長い巻き髪に触れた。
「2年か」
「はい。…あの、佐野先輩、ここ数日は部活に出てなかったですよね。一矢先輩たちが心配してましたよ」
「そうか、悪い」
悪い、と発言するその顔には何の感情も浮かんでいない。
それよりも、マネージャーになって日も浅いのに、「一矢」という下の名前で呼んでいるのが、恭平にとっては馴れ馴れしく感じられた。
最も、一矢本人がそう呼ぶように促したことも容易に想像はつくが…。
「先輩はサボった事なんてないから、何かあったんじゃないか…って」
「…」
受け答えが段々と面倒に思えてきて、恭平は視線をそらした。