初恋をもう一度。

彼女は電車で1時間と少しかかる高校へ通っており、帰りはいつも夜遅くだった。

3年生になり、ますます忙しくなったのだろうか。以前は朝までこんなに早くはなかった―

いや、わからない。

まだ関係があった頃、そこまで気にとめたこともなかった。


恭平の方はというと、徒歩でも通学できる地元の高校に通っている。

信号を渡り、真っ直ぐに行けば、20分程度で古びた校舎があらわれる。

考え事をしながら、のんびりと登校するのが恭平にとっては楽しみのひとつでもあった。



…それにしても

先程の会話はどうも変だ。

唯は、俺が茶髪だった頃を知っている。高校に入る頃に染めたのだから、唯はそれを見ているはずだ。

別れる事になったのもその年の冬頃だった。


そして、以前は「佐野くん」ではなく「恭くん」とか「恭」と呼んでいた。

別れて1年程も経てば、呼び名がそう変化しても、さして不思議ではない。

しかし―
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