初恋をもう一度。
唯と花屋
―12:50
先に待ち合わせの駅前に着いたのは恭平の方だった。
彼はとりわけ時間に神経質でもなければ、かといってそれほど遅刻もしない。
唯の方も至って常識的な感覚の持ち主で、どちらかと言えば彼女の方がきっちりとしたタイプだ。
恭平が早く着いたのには2つ理由があった。
1つは、朝食を摂ってこなかった事。
母親はいつも通りに用意をしていたが、何となく食欲が湧かなかった為、出掛けまで適当に時間を潰した。
2つ目は…単純に楽しみだったからだ。
―12:55
「恭平くん…っ??」
振り向くと、唯が駆け寄ってきた。
「遅れちゃってごめんねっ!!!」
「や、俺が早かったんだよ。まだ時間前」
そう微笑むと唯も明るい笑みを浮かべた。
「ほんと??よかったぁ」
「ああ、…そういや花屋ってどこのだ??」
「えっとね、電車だと2駅で…歩きだと30分くらいかな」
「ん、天気いいし歩くか??」
「散歩日和だし、そうしよっか」
駅の向こう側をしばらく行くとある広い花屋―
実はそこは以前2人で行ったことのある場所だった。唯は覚えてはいないと思うが―。