初恋をもう一度。
しばらく歩くと、道の左手に現れた花屋。
アンティーク調の木でできたプレートに、ペンキか何かで店の名前が筆記体で書かれている。
街の中にあるような室内の店とは全く違い、畑のような広い敷地にビニールハウスがある。
そのビニールハウスの入り口を花や蔦が飾り立て、中に入っていくと様々な種類の鉢植えがある。
「わぁ…」
色とりどりの花の楽園に唯は声をもらした。
「やっぱり春はいっぱい咲いてるからいいなぁ」
「どの花が1番好き??」
「え~、1番は決められないけど…」
唯は植物園のような景色の中をふわふわと舞うように歩く。
「カーネーションとか…こういうひらひらしたのも好きだし、チューリップも可愛くて好きだなぁ」
唯は、花なら何でも似合ってしまう、不思議な雰囲気がある。
「花は何でも好きだよ」
「そっか」
すると後ろから声がかかった。
「あら、唯ちゃん!!!…もう1人は恭平くん??」
そう声をかけてきたのは、ワンレングスの長い黒髪を後ろのやや高い位置でまとめている、この花屋の店員・瀬野依子―せの よりこ―だった。
彼女はもう30代になっただろうか。以前、何度かこの花屋に来た時にも少し話した事があった。
そして自分たちの事を覚えていたのだ。