初恋をもう一度。
辿る記憶
一昨日の土曜日。
唯とカフェで食事を摂ったあと、少し話してから帰宅した。
夜になるとメールを送った。
―今日は色々話せてよかった。今まで行った場所、また行こうな―
しかし、返信は火曜の朝になってもこなかった。
束の間の夢だったのだろうか…。そんな風にも思う。
「浮かない顔だな」
登校してきた泉が声をかけてきた。
「今日はまた先週のように早いな」
「ああ、また待ち伏せしてた。…会えなかったけどな」
「…また何かあったのか」
恭平は今までの経緯を話した。
「…ずいぶんと進展があったんだな」
「ああ…」
「で…いま1番、気に留めているのは返信がこない事か??」
「ん、まぁそうだな…」
「その日、会ってた中で何か機嫌を損ねるような事は??」
「………あ」
「あるんだな」
「ある…っちゃあるけど…大した事じゃねえよ」
泉が黙って先を促す。
「花屋の店員に、自分が記憶無くしてること知られたくないとかで…」
その辺りの些細な出来事を恭平は話した。
「んー…それは確かに…大したことないな。そのうちメールくらい来るんじゃないのか??」
泉は、返信のこない理由がピンと来ずにいた。
そこには、彼らには察する事のできない背景があった―。