初恋をもう一度。
風呂から上がり、自分の部屋のベッドに仰向けになった。
考えがまとまらず、記憶がばらけていくような感覚に見舞われた。
すると扉がノックされた。
「お兄ちゃん??」
「…なんだ??」
「入るよ??」
そう言って、するりと部屋に滑り込んできたのは妹の亜紀だった。
とりわけ仲が悪いという事もないが、普段、部屋にくるような事は滅多にない。
「なんだよ」
「…唯ちゃんと会ったの、本当??」
「お前…何で知ってんだ」
亜紀は少しうつむき、間を置くと言った。
「弟から聞いたの」
唯には弟がいた。クラスは別だが、亜紀とは同じ中学の同級生・里見 誠―さとみ まこと―だ。
「2度と会わせるなって…」
「何で弟が…そんな事…」
「あのね…」
亜紀は言いづらそうに先を焦らした。
「…唯ちゃんが記憶無くしたって本当なの??」
「ああ」
「それって、やっぱりお兄ちゃんの責任なの…??」
「…あいつが、誠がそう言ったのか??」
恭平は風呂から上がったばかりのせいもあってか、急に喉の乾いてくるのを感じた。