初恋をもう一度。
「亜紀。…俺のせいかもしれないとは思ってる。別れる時に喧嘩になったし…」

「喧嘩って…殴ったりとかしたの!?」

亜紀の声が少し大きく感情的になった。


「するかよ…」

「でも…記憶喪失になるくらいの事って…」

「ああ、俺も少し前に知った。まさか…記憶なくす程のことを自分がしたなんて思ってなかったんだ」

「…何で…今更会うの??」


「ただ…やり直したいからだよ」

「それって…お兄ちゃん、自分勝手じゃないの??記憶喪失って…忘れることで唯ちゃんは…自分を守れてたんじゃないの??…自分がまたやり直したいからって…。思い出して、また辛い思いさせていいわけ!?」


「うるせえな…っ!!!」

突然の怒鳴り声に亜紀はびくっとして、涙目になった。

「唯ちゃんに…優しくしてあげなよ…っ、もっと!!!考えてあげなよ好きなら…っ!!!」

すると亜紀は、バタンっと乱暴にドアを閉めて出ていってしまった。


亜紀は自分の事で精一杯だったが、泣いていたのは彼女だけではなかった。


恭平もまた、暗く耐え難い思いを抱える1人に変わりはない。
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