初恋をもう一度。

「うーん、やっぱり男の人って、あんまりこういう話はしてくれないですよねっ。いいです」

「…今日はな、いつも相談してる奴が来てなかったんだ。代わりに…その…」

「聞かせてもらえるんですね??」

河音は恭平の性格を気遣った。


「ああ。少しだけ、な??」

「いいですよ」


「あのな…」


気付くと恭平は、最近あった大半のことを話していた。

話し終わってから、少し恥ずかしさが込み上げてくる。

自分は年下の女に何を弱音なんか吐いているんだろう。よりによって恋愛の話なんか―と。


「佐野先輩って、案外…女々しい??」

「なっ!!!」

「う、嘘です!!!冗談ですっ!!!」

思いの外、動揺する恭平のことを、河音は少し可愛いと思った。


「メール、もしかしたら唯さんのお母さんが止めたとか、消しちゃったとか…そういう事もあるんじゃないですか??」

「…あるかぁ??」

「ん~、まぁ判らないです」

「なんだよ…」

「でも、そういう可能性もあるんじゃないかなぁ」

「んー…」

「私ね、もし本当のこと知ったとしても、唯さんはそんなに怒らないと思うんです」

「は、何でだ??」

「だって私と似たタイプなんですよね??…私、佐野先輩の暴言って何だか許せちゃうんです」

「ぼ、暴言てなぁ…」

「大丈夫ですよっ、きっと。1度ちゃんと、話し合えるといいですね」

「…まぁな。…ありがとな、色々」

「いえ、どういたしまして」

「じゃあ、な…」


河音の笑顔を確認すると、恭平は更衣室から出た。

妙に落ち着いて、すっきりとした気分だった。
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