初恋をもう一度。
唯は一方的な恭平の罵声を聞き入れるだけで、何の抵抗の声も返さなかった。
厳密には「返せなかった」のだろう。
―もういい、お前なんかどうでもいいよ。別れよう―
そう言い捨てて、恭平は唯の前から去っていった。
「俺は…酷い事を言ったんだ…お前に…。唯は何も悪くなかったのに、俺が幼かったせいで…唯の都合、考える余裕がなかった」
恭平の手が、僅かに震えだした。
「唯は何も言わなくて…ショックでもしかしたら、その時に…記憶、なくなったんじゃないかって…この前会った時からずっと…」
「違うよ」
「…え??」
「私が記憶をなくしたのは、その直後だったの」
意外な言葉だった。
「恭くんが帰ってって…その後、家に帰る時マンションの階段から落ちたの」
「…でも、この前偶然…唯の母さんに会った時、俺の事を睨んでた…明らかに。それに、…そうだ。妹が、お前の弟に言われたって」
「何を??」
「もう、俺らを会わせないようにって…」