野良猫の憂鬱




「頭、打ったんですか?」


「うん?いや、そんなことは……へ?もしかして間に合わなかった、とか?」


「はい?」



焦りを浮かべて慌てだす彼にあたしの中で警報が鳴る。



このヒト、絶対関わっちゃいけないヒトだ。


考えてみればたしかにこのヒト、信じられないくらい綺麗な顔をしてるけど着てるものもヘンテコだ。



全身、真っ白。

靴まで。


まるで学ランみたいなカタチだけど、燕尾服みたいにも見える。


上着のポケットには青で羽根みたいな紋様とAーSの刺繍が施されている。


きっちりとしたそれは彼の細い体の線をくっきり浮かび上がらせている。



同じくまっさらな白いワイシャツと、唯一淡いクリーム色をしたネクタイ。


少し緩めに結ばれたネクタイの隅には上着ポケットと同じような紋様が刻まれている。




……うん、見れば見るほどヘンテコだ。




< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop