野良猫の憂鬱
「天海 雫、だよね君」
「はあ」
初対面の人に突然名前を呼ばれた上に呼び捨て。
失礼なヤツと眉をしかめるのに彼は少しも気にする様子がない。
「おかしいな……。ちゃんと見えないように……、あれ?」
彼はゴソゴソとヘンテコな服のポケットを探って、顔を青くさせた。
「ヤバ…………!堕とされた!!」
意味不明なことを叫んで、彼は綺麗な金髪をかきむしる。
「あぁ、まったく!!あれほどキレイに隠蔽しとけって言ったのに……!!」
…………まさか、この人逃亡中の犯人とか、そういう感じ?
隠蔽とか言ってるし、どこか外国から逃げてきた殺人犯とかかも。
恐怖を感じたわけではないけれどあたしは一歩後ずさる。
厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ。