野良猫の憂鬱





「ねぇ、ダサ子~、パン買って来てよー」


「………はい」


「あ、ダサ子~、ジュースも~」


「………はい」




天海 雫(アマミ シズク)。


通称、ダサ子。


あたしは、学校が嫌いだ。





「ダサ子~、早くしないと昼休み終わるー」


「鈍くさい子ってきらーい」


「ねー?」



辻井さんを中心とするグループはキャハハと甲高い笑い声を立てながらあたしに小銭を投げつける。


チャラン、と金属の音が床に響いた。



「ダサ子~、なに落としてんの~」


「やだー、鈍くさーい」


「ダサ子改めドン子にするよー?」


「キモっ」



膝を折って床に落ちた小銭を拾い集める。




彼女たちはあたしが気に入らないらしい。



顔の半分を隠す長い前髪にそれに隠されるようにつけられた分厚いメガネ。


スカートは膝下で、第一ボタンまできっちり止められたブラウス。



今時見かけないほど地味で真面目な格好をしたあたしがとにかく気に入らないらしい。


ことあるごとにあたしに絡んではキャハハとバカにしたように笑う。




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