紫陽花なアイツ
あたしは壁の方を向いていた体を反転する。
真生が見えた。
世界が歪んだ。
違う。
あたしの視界が歪んでいるんだ。
真生は優しく笑っていたけど、あたしの顔を見ると静かに手をこっちに伸ばした。
つかみあいになった時に出来た腕の傷に触れた。
もう絆創膏を貼ってあるから、痛みはない。
「…真生が羨ましい。」
勝手に口が言う。
真生は俯いていた顔を上げる。
「巧に気持ちが通じてるもん。
すごく、羨ましい。」
本当の気持ちだった。
お世辞や綺麗事じゃない、心から出た言葉。
「あたし、本当に葉介が好き。」