紫陽花なアイツ
いつも教室内で二人だけでいるあたし達とは違って、たくさんの友達がいる唯は噂の内容を知っているらしかった。
「そー。なんかね、“紫陽花”が、うちの学校の三年に孕(ハラ)ませちゃったらしいよ?」
何なのか、あたしには一瞬意味がわかんなかった。
孕ませる?
子供が出来たってこと?
人類のひとりが誕生したってこと?
あたしはそれから上の空でお弁当を食べた。
ご飯の無くなったスペースをカツカツとつついていたら、唯に不審がられた。
葉介、学校辞めんの?
あたしの目から雫が一粒ポタと落ちた。