紫陽花なアイツ

いつも教室内で二人だけでいるあたし達とは違って、たくさんの友達がいる唯は噂の内容を知っているらしかった。

「そー。なんかね、“紫陽花”が、うちの学校の三年に孕(ハラ)ませちゃったらしいよ?」

何なのか、あたしには一瞬意味がわかんなかった。

孕ませる?

子供が出来たってこと?

人類のひとりが誕生したってこと?

あたしはそれから上の空でお弁当を食べた。

ご飯の無くなったスペースをカツカツとつついていたら、唯に不審がられた。

葉介、学校辞めんの?

あたしの目から雫が一粒ポタと落ちた。





< 116 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop